構造解説 / 厚生年金

第2階部分

会社員・公務員が加入する上乗せ年金の仕組みを、報酬比例の原則から在職老齢年金まで整理しました。

厚生年金の仕組み:会社員・公務員の所得保障

厚生年金保険は、国民年金(基礎年金)に上乗せして支給される、いわゆる「2階建て」部分を構成する年金制度です。主に会社員や公務員が加入し、現役時代の報酬額に応じて保険料と将来の給付額が決まる「報酬比例」の仕組みを特徴としています。この制度により、就労期の生活水準を引退後もある程度維持することを目指した所得保障が実現されています。

概要

国民年金との違い

日本の公的年金は「2階建て」と呼ばれます。1階部分はすべての20歳以上60歳未満の人が加入する国民年金(基礎年金)で、定額の保険料を納めます。2階部分にあたるのが厚生年金保険で、会社員や公務員が加入し、給与額に応じた保険料を負担します。

厚生年金に加入している人は、自動的に国民年金にも加入している扱いになります。つまり、基礎年金に厚生年金が上乗せされる形で給付が設計されており、現役時代の報酬が高い人ほど、加入期間が長い人ほど、将来の受給額が増える仕組みです。

1階部分

国民年金(基礎年金)

20歳以上60歳未満の全員が加入。定額保険料。受給には10年以上の保険料納付期間が必要。

2階部分

厚生年金保険

会社員・公務員が加入。報酬に比例した保険料。基礎年金に上乗せして65歳から支給。

原則

報酬比例の原則

厚生年金の最大の特徴は、納める保険料と将来受け取る年金額が、現役時代の給与や賞与の額に連動する点です。給与が高いほど、また加入期間が長いほど、将来の受給額も増加します。

国民年金が「定額」であるのに対し、厚生年金は個人の現役時代の貢献度や経済状況をより反映させた給付設計になっています。つまり、同じ期間加入していても、報酬水準が違えば受給額も異なります。これが、基礎年金と厚生年金のもっとも大きな構造上の違いです。

負担構造

保険料の労使折半

会社と従業員が半分ずつ負担する仕組みによって、個人の負担が抑えられる一方で、制度全体の原皮が確保されています。

厚生年金の保険料は、事業主(会社)と労働者が半分ずつ負担する「労使折半」の形をとっています。現在の保険料率は標準報酬月額の18.3%で固定されており、その半分の9.15%が給与から天引きされます。

会社側が同額を負担しているため、実質的には個人で納める金額の2倍の原資が制度運営に充てられている形になります。賞与(ボーナス)についても同様に、一定の上限内で労使折半により保険料が算出されます。

内訳のイメージ

被保険者負担(給与天引き) 9.15%
事業主負担 9.15%
合計保険料率 18.3%

※標準報酬月額に対する率。賞与も別途、上限内で労使折半にて算出されます。

加入範囲

対象となる事業所と被保険者

厚生年金は、法人事業所や常時5人以上の従業員がいる個人事業所などに雇用されている人が加入対象となります。事業所が適用対象であれば、雇用形態に関わらず加入が原則です。

近年では適用拡大が進み、週の労働時間が20時間以上、月額賃金が8.8万円以上といった一定の条件を満たすパート・アルバイトの方も、厚生年金への加入が義務化される傾向にあります。これにより、より多くの短時間労働者が手厚い保障を受けられるようになっています。

適用事業所

法人・一定規模の個人事業所

法人事業所は業種・規模を問わず適用。個人事業所は業種により常時5人以上で適用。

適用拡大

短時間労働者

週20時間以上・月額8.8万円以上など一定条件を満たすパート・アルバイトも加入対象。

被保険者

事業所に雇用される者

適用事業所に雇用される従業員は、国籍や雇用形態を問わず被保険者となります。

受給要件

老齢厚生年金の受給要件

老齢厚生年金を受け取るためには、まず老齢基礎年金の受給資格(10年以上の期間)を満たしていることが大前提です。その上で、厚生年金の被保険者期間が1ヶ月以上あれば、65歳から基礎年金に上乗せして支給されます。

かつては60歳から支給されていましたが、現在は段階的に引き上げられ、原則65歳からの開始となっています。なお、厚生年金の被保険者期間が長い人は、繰上支給(65歳より前から減額されて受け取る)や繰下支給(65歳より遅く割増で受け取る)を選ぶこともできます。

ただし、厚生年金に1ヶ月しか加入していなければ上乗せ額はごくわずかになります。基礎年金の受給資格を満たすだけでは、老齢基礎年金のみの支給となり、厚生年金分は加算されません。

調整仕組み

在職老齢年金と再評価率

01 在職老齢年金の仕組み

65歳以降も働き続け、一定以上の収入がある場合、厚生年金の一部または全額が支給停止になることがあります。これを「在職老齢年金」と呼びます。年金額と給与(総報酬月額相当額)の合計が一定の基準(現在は月額50万円)を超えると、超えた分の半額が年金からカットされる仕組みです。働きながら年金を受け取る際の、バランス調整の役割を果たしています。

02 給付額を決定する再評価率

将来の年金額を計算する際、現役時代の給与を現在の価値に引き直す「再評価率」という指標が用いられます。数十年前に稼いだ10万円と、現在の10万円では価値が異なるため、賃金の上昇や物価の変動を考慮して、受給時の経済水準に合わせた調整が行われます。これにより、インフレ等によって年金の価値が実質的に目減りすることを防ぐ仕組みが組み込まれています。

補完と調整

経過的加算と年金分割

厚生年金には、制度の移行や個人の事情に配慮するため、複数の調整仕組みが用意されています。代表的なものが、基礎年金への補完を行う「経過的加算」と、離婚時の受給権調整を行う「年金分割制度」です。

経過的加算の意義

特別支給の老齢厚生年金から65歳以降の年金への切り替え時に、基礎年金の額を補完するために加算されるのが「経過的加算」です。主に20歳前や60歳以降の厚生年金加入期間がある場合に、その期間分を基礎年金に代わって厚生年金側で保障しようとする仕組みです。一見複雑な計算ですが、加入者の不利益にならないよう調整するための制度的な工夫です。

離婚時の年金分割制度

厚生年金には、婚姻期間中の厚生年金記録を元夫婦間で分割できる制度があります。合意による分割(合意分割)と、第3号被保険者期間分を自動的に半分にする(3号分割)の2種類があります。配偶者の内助の功を認め、将来の年金受給権を公平に分かち合うもので、離婚後の高齢期の生活困窮を防ぐための社会的な配慮となっています。

障害・遺族

障害厚生年金と遺族厚生年金

厚生年金は老齢年金だけでなく、加入中の病気やケガ、死亡に対する保障も備えています。いずれも基礎年金に上乗せして支給されるため、国民年金のみの加入者より手厚い給付が設計されています。

障害厚生年金

厚生年金加入中に初診日のある病気やケガで障害状態になった場合、障害基礎年金に加えて支給されます。基礎年金にはない「3級」という区分があるほか、最低保障額が設定されているなど、より手厚い保障が特徴です。

遺族厚生年金

被保険者または老齢厚生年金の受給権者が亡くなった場合、遺された家族に支給されます。報酬比例部分の4分の3に相当する額が給付され、遺族の生活を支える柱となります。

制度移行

職域加算から経過的職域加算へ

かつて公務員などが加入していた共済年金には、厚生年金に相当する部分に加えて「職域加算」という上乗せがありましたが、2015年の被用者年金一元化により厚生年金に統合されました。現在は、廃止前の期間分についてのみ「経過的職域加算」として給付が維持されています。

制度の統合により、公務員も民間会社員も同じ土俵で年金制度を支える仕組みへと変わりました。一元化前の加入期間に応じて経過的職域加算が支給されるため、長く公務員として勤務していた人ほど、この加算額が年金額に反映されます。

確認ポイント

制度を理解するための確認事項

厚生年金の全体像をつかむために、ここまでの内容をまとめました。次に読むべき記事への手がかりにもなります。

  • 厚生年金は基礎年金に上乗せされる2階部分で、報酬に比例した保険料と給付が特徴
  • 保険料は事業主と労働者が折半で負担し、保険料率は標準報酬月額の18.3%
  • 適用拡大により、一定条件を満たす短時間労働者も加入対象となっている
  • 老齢厚生年金は原則65歳から支給、基礎年金の受給資格が大前提
  • 在職老齢年金により、働きながら年金を受ける場合は収入に応じた調整がある
  • 障害・遺族の各年金も基礎年金より手厚い保障が用意されている