二重払いの防止
相手国に派遣された際、一定期間は日本の年金制度のみに加入し続ける仕組み。
ビジネスのグローバル化やライフスタイルの多様化に伴い、海外で就労する日本国民や、日本で働く外国人が増加しています。年金保険料の「二重払い」や加入期間が不足して年金が受け取れなくなる「掛け捨て」のリスクに対し、日本は諸外国との間で社会保障協定を締結し、制度の橋渡しを行っています。
相手国に派遣された際、一定期間は日本の年金制度のみに加入し続ける仕組み。
現地の制度に加入した期間を、将来日本で年金を受け取る際に合算できる仕組み。
海外転出後も国民年金への任意加入が可能。将来の受給額を増やす選択肢。
日本は20カ国以上と協定を締結。居住先がどの協定を結んでいるかの確認が基本。
社会保障協定とは、日本と相手国の間で年金制度の重複加入を防ぎ、一方の国で納めた期間をもう一方の国で年金を受け取る際に利用できるようにするための取り決めです。ビジネスで海外に赴任する人、結婚や留学で海外に移住する人など、生活の拠点が国境を越える場合に生じる年金制度の隙間を埋める役割を果たします。
具体的には、相手国に派遣された際に一定期間内であれば日本の年金制度のみに加入し続ける「派遣元国の制度維持」、あるいは現地の制度のみに加入する場合でも、将来日本で年金を受け取る際に現地の加入期間を合算できる「期間通算」の2つの仕組みが中心となります。
両国の年金制度に同時に加入し、保険料を二重に負担することを防ぐ。派遣元の制度のみに加入できる期間が設けられています。
現地の年金制度に加入した期間を、日本の年金の受給資格期間として合算できる仕組み。ただし相手国との協定内容によって適用範囲が異なります。
日本は現在、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、中国、韓国など、主要な経済パートナーを含む20カ国以上と協定を締結し、実施しています。国によって「二重払い防止のみ」を対象とする場合や、「期間通算」も含む場合など、協定の内容には差異があります。自分が居住・就労する国が日本とどのような協定を結んでいるかを知ることは、将来の権利を守るための基本となります。
最新の締結国一覧や協定の詳細な内容は、日本年金機構のホームページで各国語の案内ととも公開されています。
日本国籍の方が海外に移住する場合、国民年金の加入義務はなくなりますが、希望すれば「任意加入」を続けることができます。任意加入をして保険料を納め続ければ、将来の老齢基礎年金を増額させることができるほか、海外居住中に障害を負った際などに障害基礎年金を受け取れる可能性が確保されます。
任意加入しない期間は「合算対象期間(カラ期間)」として受給資格の10年にはカウントされますが、金額には反映されません。つまり、受給資格を得るための期間は満たせても、実際の年金額には反映されないため、将来の受け取り額を増やすには納付が必要です。
将来、海外に居住したまま日本の年金を受け取ることも可能です。年金は日本円、あるいは現地の通貨で海外の銀行口座に振り込まれます。この際、現地の税制や日本との租税条約に基づき、税金の取り扱いが変わることがあります。また、定期的に日本年金機構へ「現況届」を提出し、居住の実態を報告する義務が生じる点にも注意が必要です。
年金を受給している方が毎年1回、自身の生存確認と受給要件の継続を届け出る手続きです。海外在住の場合は、日本の年金機構から送付される用紙に現地の公的機関等の証明を受けて返送する必要があります。手続きが遅れると年金の支払いが一時停止される場合があります。
年金の受け取りには現地の税制も関わります。日本との租税条約の有無によって年金所得に対する課税のあり方が変わるため、居住する国の税務当局の取り扱いを確認することが必要です。ただし、本記事は一般的な制度の解説であり、具体的な税務判断は現地の専門家にご確認ください。
日本で働いていた外国籍の方が、帰国して日本の年金受給権を得ない(10年未満の加入)場合、それまでに納めた保険料の一部を「脱退一時金」として請求できる制度があります。これは掛け捨て防止のための措置です。
ただし、脱退一時金を受け取ると、その期間の年金加入記録はすべて抹消されるため、将来再び日本で働く可能性がある場合や、自国との期間通算を利用したい場合には慎重な判断が必要です。
海外居住中の期間は、保険料を払わなくても受給資格期間の10年としてカウントされる「カラ期間」となりますが、年金額には反映されません。一方で、任意加入を選択して保険料を納めれば、将来の受給額を増やすことができます。
ご自身の経済状況や、将来日本に帰国する予定があるかどうかによって、どちらを選択すべきかが変わってきます。
会社員が企業の辞令で海外赴任する場合、基本的には厚生年金に加入したままとなります。協定締結国への赴任であれば、通常は5年以内の予定であれば日本の厚生年金のみに加入し、現地の年金保険料は免除される手続き(適用証明書の発行)を行います。
5年を超える長期赴任の場合は現地の制度への加入が基本となりますが、企業や現地の法律によって取り扱いが異なるため、人事部等との確認が不可欠です。
日本の厚生年金のみに加入。現地の年金保険料は免除。適用証明書の発行手続きが必要。
現地の年金制度への加入が基本。企業や現地の法律により取り扱いが異なるため、人事部との確認が不可欠。
海外移住を終えて日本に帰国した際は、市区町村の窓口で国民年金の加入手続き(または厚生年金への加入)を行う必要があります。帰国した日(転入届を出した日)が加入日となります。海外での任意加入をしていなかった場合、この手続きを忘れると未納期間が発生してしまうため、生活基盤の整理と合わせて年金の手続きも優先的に行うことが大切です。
海外居住中に発生した病気やケガ、あるいは死亡についても、日本の年金制度(任意加入中や厚生年金加入中)の要件を満たしていれば、給付の対象となることがあります。ただし、診断書の作成や現地の公的機関による証明書類の取り寄せが必要になるなど、国内で完結する場合に比べて手続きのハードルが高くなる傾向があります。万が一の際の連絡先や相談窓口を把握しておくことが重要です。
はい、可能です。日本国籍の方であれば、海外に転出後も国民年金の「任意加入」制度を利用して、保険料を納め続けることができます。任意加入を続けることで、将来の老齢基礎年金の増額や、海外居住中の障害・遺族年金の受給可能性を確保できます。手続きは転出前に日本年金機構で行うのが原則です。
協定のない国では二重払いの防止措置や期間通算の仕組みが適用されないため、現地の年金制度と日本の制度の両方に加入する義務が生じる可能性があります。ただし、日本の厚生年金に加入している期間が5年以内であれば、日本の年金制度のみに加入し続けることができる場合があります。赴任前に最寄りの年金事務所で確認してください。
脱退一時金を受け取ると、それまでの日本の年金加入記録は抹消されます。その後、再び日本で就労し年金制度に加入した場合、加入期間はゼロからスタートします。自国との社会保障協定で期間通算を利用したい場合にも、脱退一時金を受け取った期間は通算の対象外となる点に注意が必要です。
海外で日本の年金を受け取る場合、居住する国の税制と日本との租税条約によって税金の扱いが変わります。一部の国では年金所得に現地の課税が適用されるほか、日本での課税方式が調整される場合があります。具体的な税務の扱いは個別の状況により異なるため、本記事では一般原則のみを解説しています。
現況届の提出がない場合、受給者の方の生存確認や受給要件の確認ができず、年金支払いが一時的に停止される場合があります。日本年金機構から届出用紙が送付されますが、海外に住んでいると郵送の遅れが生じることがあります。期日までに提出できないときは、年金事務所またはねんきんダイヤルに連絡し、手続きの方法を相談してください。
海外居住に伴う年金の手続きは多岐にわたり、個別のケースによって最適な選択は異なります。日本年金機構のホームページには、社会保障協定の詳細や各国語での案内が用意されています。国境を越えた移動が当たり前になる中、年金制度もまた「場所を問わない保障」へと進化しており、そのルールを正しく利用することが個人の不利益を防ぐことにつながります。
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